誰でもわかる感染症の知識

最終更新日:2022.03.30

“うつる”、“こわい”といったイメージをもつ「伝染病」。この「伝染病」という言葉は、1999年4月から施行された感染症新法により、「感染症」に置き換えられました。その背景には、医学の進歩により多くの感染症が治り、予防が可能になりつつあるという事実があります。しかし一方で、航空機の輸送などによる活発な国際交流が、新しい感染症の国内への侵入、国外での感染を容易にしています。最近ではO517やエイズなどがその例です。また、かつて流行した結核などの増加傾向も見られます。現代の日常生活において感染症に対しての知識は、自らを守るためにとても大切なものであるといえるでしょう。そこで今から、感染症というものについて分かりやすく説明していきたいと思います。

 

主な感染症

インフルエンザ

「インフルエンザ」は、インフルエンザウイルスが起こすのどや気管、気管支の感染症です。のどの痛みやせきといった気道の症状より、熱や筋肉痛、関節痛といった全身症状が強いのが特徴です。

 

 

感染した人が出すせきやくしゃみを吸って感染します。流行時には休養をとり、栄養を付けることが大切です。また、外出後はうがいをすることを心がけてください。

 

感染症まめ知識

ヒトに感染を起こすインフルエンザウイルスにはA型とB型があります。A型インフルエンザウイルスの型は表面のHとNの型で決まり、その組み合わせで表示します。最近約20年は、H3N2の香港かぜ、H1N1ののソ連かぜにB型インフルエンザを含めた三者が流行しています。A型インフルエンザにはアマンタジンという薬が効果があります。また、ノイラミニターゼ(N)の働きを抑えることによりA型、B型の両方に効果のある薬が研究されています。

結核

結核の症状は、感染した箇所に関連した症状に加え、微熱(37.2~37.3℃)、寝汗、体重減少、全身倦怠感などが多く見られます。肺結核のほかに、髄膜炎や粟粒結核などの全身感染症や左図のような局所感染まで多岐に渡ります。もし感染が見つかった場合には、抗結核剤での治療が必要になります。

 

結核で最も多い肺結核は、患者のせき・くしゃみによってばらまかれた菌を吸うことによって感染が広がります(飛沫感染)。予防にはマスクが大切です。

最近の統計では、新登録患者に占める高齢者の割合が高いことが特徴で、60歳以上の高齢者が全患者の50%以上です。定期的に結核検診を受けることが大切です。

感染症まめ知識

日本では、1935~50年まで結核が死因の第1位でしたが、その後、治療法・公衆衛生の発達により急激にその数が減少しました。1970~80年にかけて患者数は半減しましたが、しかし、その後の減少速度は鈍くなってきます。とくに肺結核患者は1980年以降、2万3000人前後の横ばい状態が続いています。「結核は昔の病気」と楽観的に考えられていた時期もありましたが、決して油断できない感染症の一つです。結核菌は健常人にも感染する病原性の強い菌で、高齢者や、糖尿病、腎透析患者など免疫能力が低下した患者では感染の危険が高くなります。とくに最近ではエイズ患者における感染患者数が増加し問題になっています。

食中毒

食中毒は、食品を汚染した細菌が原因で、下痢や腹痛、吐き気、嘔吐などの症状が出る病気です。
食品の中で最近が毒素を出し、その毒素で起こる毒素型、食べた細菌が腸で増えて起こる感染型の2つの食中毒があります。

毒素型の食中毒

毒素型の食中毒の代表は黄色ブドウ球菌の出す毒素によるものです。傷やおできのできた手で料理をすると、黄色ブドウ菌などが食物を汚染します。それをそのまま置いておくと、菌が毒素を出します。(この菌は熱に強いので、加熱したりレンジにかけてもなくなりません。)それを食べると数時間で腹痛、嘔吐、下痢が始まります。

感染型の食中毒

感染型の食中毒で主なものが、刺身や寿司などで起こる事が多い腸炎ビブリオ中毒。これは、毎年6月から9月ごろまで多数発生します。感染の経路としては、部屋に長時間置いてあった寿司などを食べることで、寿司ネタの海産物に付いていた腸炎ビブリオが腸で増え、しばらくすると下痢と腹痛が始まるというものです。

 

感染の対策としては、手に傷などがあるときは料理するのを避けること、新鮮な食品を食べること、保存温度に注意すること、室内で長期保存しないこと、などが挙げられます。

感染症まめ知識

近年では、鶏肉や鶏卵からのサルモネラ感染が増えており、その他カンピロバクターや腸管出血性大腸菌O157などによるものもあります。

腸管出血性大腸菌(O157)感染症

腸管出血性大腸菌(O157)は、酸では死滅せず生存し、少量の菌でも感染する強力な感染症です。菌がつくり出す毒素(ベロ毒素)が臓器を攻撃し、ひどい時には溶血性尿毒性症候群:貧血、血小板の減少、腎不全をおこし、けいれんや意識障害をおこして死亡する場合もあります。

 

腸管出血性大腸菌(O157)は、菌に汚染された食品や水を口にして感染します。対策としては、食材の加熱、まな板・ふきんの消毒、トイレ周りの衛生化など。小児や高齢者で下痢がみられ、食中毒が疑われたら、すぐに病院に行きましょう。素人判断で無理に下剤を飲ませてはいけません。血便をともなう下痢が出たら、とくに注意が必要です。

 

0157家庭での対策について

家庭でできる食中毒予防6つのポイント

①食品の購入 新鮮なものを購入し、買物後は寄り道をせず帰りましょう。
②家庭での保存・・・ 冷蔵庫は詰め過ぎをせず、冷蔵庫は10℃、冷凍庫はマイナス15℃以下に維持しましょう。
③下準備・・・ まずは、手を洗いましょう。清潔な調理器具を使いましょう。(例:肉や魚の後に野菜などを切る場合には、包丁やまな板を洗って熱湯をかけて使いましょう。)
④調理・・・ 十分に加熱しましょう。(中心温度が75℃で1分間以上がめやす。)
⑤食事・・・ 食卓につく前に手を洗いましょう。調理後の食品は長時間室内に放置しないように気をつけましょう。
⑥残った食品・・・ 少しでも怪しい食品は思いきって処分しましょう。特に仕出し弁当については出されたら早く食べ、残っても家庭へ持ち帰らず、必ず処分しましょう。肉や魚などは、他の食品に肉汁などがかからないよう、ビニール袋や容器に入れて保存しましょう。
  • なお、腹痛、下痢、嘔吐、発熱などの異常が現れた場合は、すぐに医療機関で受診してください。

 

感染症まめ知識

大腸菌はヒトの腸管内に常在し、通常は体に害を及ぼすことはありません。しかし中には、出血性大腸炎や、溶血性尿毒性症候群をおこすものがあり、腸管出血性大腸菌もその一つです。
この菌は1982年アメリカのオレゴン州とミシガン州で発生した生焼きハンバーガーによる食中毒事件の原因菌としてはじめて分離され、腸管出血性大腸菌・O157と任命されました。

アニサキス症

胃のアニサキス症では、胃の不快感に続いて激しい痛みがみられ、腸のアニサキス症では、右または下腹部全体に激しい痛みがみられます。吐き気や嘔吐を伴うこともしばしばあります。

アニサキスはクジラ、イルカなどの海にいる哺乳動物の胃壁に寄生する虫です。この虫の卵は哺乳動物の便とともに海中に排出され、孵化し、幼虫となります。この幼虫はオキアミ類に摂取され、そのオキアミ類をサバ、アジ、イカなどが食べ、さらにこれらの魚類を哺乳動物が食べるとアニサキスの幼虫が胃壁に到達し、そこで成虫になります。

アニサキスの幼虫は、調味料や薬では死にません。しかし、冷凍なら数分で死滅するので、魚介類は一度火を通すか、冷凍してから食べるようにしましょう。

感染症まめ知識

海産魚類を刺身など生で食べた場合、アニサキスの幼虫は通常、胃や腸を素通りして体外に排泄されますが、たまたま幼虫がヒトの胃壁や腸壁に寄生するとさまざまな胃腸症状がおこります。これをアニサキス症といい、治療は胃内眼鏡で幼虫を探して直接摘出します。

肝炎

急性肝炎では、発熱、全身倦怠感、食欲不振、黄疸などの症状がありますが、普通は約1~2カ月で軽快します。
慢性肝炎は6カ月以上肝臓の炎症が持続し、食欲不振、倦怠感などの症状が徐々に進行します。どちらも血液検査でGOTやGPTという酵素が高い値を示します。診断は血液中のウイルス抗原を検出したり、抗体価を調べることで確実になります。抗体を持たない人が東南アジアやインドなどに旅行する場合に感染しやすいA型とB型肝炎ウイルスに対しては、ワクチンによる予防が可能です。

感染経路としては、A型肝炎ウイルス(HAV)は、水や食物を介して感染。B型感染ウイルス(HBV)やC型感染ウイルス(HCV)は、性行為や麻薬常習者の注射器の共有、母子感染などで感染する場合などがあります。

A型肝炎ウイルス(HAV)

大便にもたくさんのウイルスが出ます

 

B型感染ウイルス(HBV)やC型感染ウイルス(HCV)

  • 麻薬常用者などの
    注射器の共有による感染

  • 性行為による感染

  • 母子感染

  • 病院での針刺し事故による感

定期的な血液検査を行うことや、ワクチンなどでの予防が効果的です。

感染症まめ知識

肝炎をおこす原因としてはウイルス、アルコールなどがありますが、その中でも代表的なのはウイルスによる肝炎です。肝炎ウイルスでは、A型・B型・C型・D型・E型肝炎ウイルスの5種類がよく知られていますが、最近はG型ウイルス、GB型ウイルスおよびTTウイルス(TTV)など新たな肝炎ウイルスも発見されています。

エイズ

エイズは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した後平均10年ぐらいかかっておこる免疫不全症です。免疫不全になると、健康時には平気な弱いウイルスや細菌、カビなどの感染がおこって、時に、死に至ります。1998年末の統計では、地球上には約3,300万人のHIV感染者がいます。毎日1万6000人が新たに感染していると推定できます。

  • 健康なときは・・・

  • エイズ(免疫不全)になると・・・

感染経路

  • 性行為

  • 血液

  • 母子感染

世界の国々と同様、今の日本で主となる感染経路は性行為です。日本国内での感染、男女間あるいは男同士での性行為による感染者が年々増えています。最近では治療方法が進歩し、ウイルスの増加が抑えられ、発病者が少なくなりましたが、まだまだ治る病気ではありません。感染しないための予防が第一です。性行為以外では、血液、母子感染など、血液を介して感染する場合があります。「この人は大丈夫だろう」などと危ないセックスはしないこと、コンドームをつけること、忘れないでください。

 

感染症まめ知識

HIVの増殖を抑える薬は高価です。地球上のHIV感染者の9割以上はアフリカやアジアの経済力のない途上国に集中しており、進歩した治療法を受けられないのが現状です。安くて効果のよいワクチンを開発するのも先進工業国の役割なのです。

Q熱

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感染症まめ知識

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性感染症(梅毒)

最近性感染症と呼ばれるものが増えているとのことですが、これは昔の性病と違うのですか?

性感染症とはセックス、またはそれに類似の行為でうつしたり、うつされる感染症をよぶもので、性病という言葉は近年あまり使われなくなりました。性感染症に含まれるものに、梅毒、淋病、性器クラミジア感染症のほか、エイズ、性器ヘルペス感染症などがあげられます。

 性感染症にかからないための注意はどうしたらよいでしょうか?

怪しげな歓楽街に近づかないことです。風俗営業従事者からの感染の機会はかなり高いものです。つまり、感染源にふれなければかからない疾患です。セックスにはコンドームの使用が予防の鉄則。また、身の覚えがあったときは、性器などに異常を感じたら、診察をすぐ受けて下さい。

日常生活に患者さんの消毒は必要ですか?

治療をしている患者さんの消毒はいりまあせん。しかし患者さんと性的接触をした人は、すぐに医療機関に受診して下さい。

これらの病気は治りますか?

ほとんどのものは治療をすれば治ります。

感染症まめ知識

梅毒は日本に侵入して500年を経過した病気です。ペニシリンは実用化され、その効果はきわめて高いものでした。本来は梅毒の問題は解消sれてもよさそうですが、現在も必ずしもそうではありません。病原体は梅毒トレポネーマというスピロヘータです。その感染力は強く、第一期、第二期の人と性的接触をおこすとほとんど感染します。世界的にも現在、やや増加傾向にあります。治療はペニシリン内服でよく、ときに他の抗生物質(マクロライドなど)が使われます。

ヘリコバクター・ピロリ感染症

50歳以上の人では、約70~80%の人が保菌しています。この菌の除菌が胃潰瘍の再発を防止します。

酸分泌をおさえる薬と抗生物質を併用すると、潰瘍の再発を防止します。

  

 

感染症まめ知識

近年ヘリコバクター・ピロリという菌が胃の粘膜の下に生息し、この菌が胃潰瘍とか胃炎に関係していることが知られてきました。がんとの関係も問題になっています。この菌は世界中に分布して、胃潰瘍は80%くらい、胃炎では60%くらいの人が感染しているといいます。
人口の約半分がこの菌を胃に保菌していることが知られています。この菌を抗生物質で殺すと潰瘍は再発しなくなります。単に胃酸の分泌をおさえただけでは、潰瘍の再発がみられます。また、この菌が胃がんの発生と関係があることが問題になっています。

マラリア

マラリア原虫が起こす病気で、熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、卵形マラリア、四日熱マラリア(まれ)の4種類があります。主な症状は高熱です。(写真左)熱帯熱マラリア原虫

ハマダラ蚊は熱帯地方に幅広く分布しています。ハマダラ蚊は暗くなってから活動するので、危険な地域への旅行時には早めに宿舎に引き上げるのも一案です。

対策

虫除けスプレーや蚊帳も役に立ちます。

 

 

感染症まめ知識

潜伏期は熱帯熱マラリアは約1カ月で、発病すると毎日高い熱が出ます。それ以外のものは潜伏期は数カ月かそれ以上のことがあります。発熱は三日熱マラリア、卵形マラリアでは三日ごと、四日熱マラリアでは4日ごとにみられます。熱帯熱マラリアでは高熱が続きます。治療や予防薬については専門医に相談することを勧めます。

コレラ

コレラ菌は桿状(かんじょう)の形をした菌で、アルカリ性や塩分を好む菌です。そのため河川が湾にそそぐ河口部にすむエビなどの甲殻類のえらや、貝の中などにすみついています。コレラは、コレラ菌の毒素によりおこります。この菌は「米のとぎ汁様」と称される重症の下痢を引き起こし、脱水症をおこします。適切な輸液が受けられない場合は、体液の10%以上、一升びんで10本以上の水分が失われます。最終的にはショックから昏睡状態に陥り死に至ります。

 

コレラ用簡易ベッド(寝たまま便をするための穴があいている) 

コレラ流行地域への旅行では、氷や生ものは絶対に飲食しないように、また輸入魚介類は十分加熱して食べるようにしましょう。

 

感染症まめ知識

コレラには、重症タイプのアジア型と、軽症タイプのエルトール型があります。最近の流行はエルトール型がほとんどです。治療は輸液治療が最も重要です。抗菌薬投与は補助的に行なわれます。コレラ菌の仲間に、食中毒を起こす陽炎ビブリオ菌があります。

人喰いバクテリア症

病原菌は皮膚の小さな切り傷、かき傷などから侵入します。初期の症状は熱、感染部位の痛み、腫れ、傷口の発赤、ときに紅斑がみられます。写真左:A群レンサ球菌(化膿性レンサ球菌)

人喰いバクテリアによる劇症型

 

喉が痛かったり、扁桃腺が腫れた場合は、医師にかかることが大切です。この菌が検出された場合は、適切な治療が必要です。切り傷や創傷部位があれば、常に清潔を保ち、その部位の発赤、腫れ、痛みが増すようなら、医師の診断を受けましょう。

感染症まめ知識

人喰いバクテリアの正体は、A群レンサ球菌(化膿性レンサ球菌)のなかの一部によるものです。これは、猩紅熱、とびひ、丹毒、扁桃炎、リウマチ熱、急性腎炎など多くの疾患を引き起こします。この菌は、従来の菌が持たなかった新しい毒素を産生し劇症型の感染症を引き起こし、30~70%の死亡率を示します。感染数時間以内で感染初発病巣周辺の組織が腐って(懐死)きてその範囲が広がり、四肢懐死型が俗に人喰いバクテリア症とよばれています。また、最近分娩時におこるものもあります。

炭疽

疫学経路

  • 感染動物やその骨、毛皮、皮革との接触、昆虫の咬傷(皮膚炭疽)
  • 芽胞による空気感染(肺炭疽)
  • 経口感染(腸炭疽)

潜伏期間

1~7日 

感染期間

菌体を保有する間、常に可能性がある。

症状

皮膚炭疽 ニキビ様の初期病変の後、無痛性で非化膿性の悪性膿疱の出現
肺炭疽 吐き気、嘔吐、腹痛、吐血、血便、腹水の貯留(腸管感染)、咽頭炎、嚥下障害、発熱、頸部のリンパ節炎
腸炭疽 インフルエンザ様症状の後、頭痛、筋肉痛、悪感、発熱、胸部の軽度の疼痛の発生、突然の呼吸困難、チアノーゼ、昏睡を伴う失見当識(重症)治療
炭疽菌性髄膜炎 溶血性髄膜炎、意識消失

治療

ペニシリンなどの抗生剤を感染初期に大量投与、その他、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ゲンタマイシンなど。

経過・予後

皮膚炭疽の約80%は10日程度で治癒するが、治療しないと敗血症などになりやすく、肺炭疽では、24時間以内に死亡、治療しても、口咽頭部感染では致死率は焼く50%、髄膜炎ではほぼ100%。

感染症まめ知識

世界的(特にアジア、南米、アフリカ)に分布しています。

無菌性髄膜炎

感染経路

患者、保菌者の咽頭、鼻汁からの経口感染、飛沫感染、腸管感染が考えられる。

流行時期

毎年夏にピークあり

潜伏期間

2~5日

原因について

ウイルスが原因のことが殆どで、その中でエンテロウイルス、エコーウイルス、コクサッキーウイルスというタイプが多いと言われています。これらの一部は手足口病などを起こすウイルスです、おたふくかぜのウイルスもこの病気を起こします。

治療方法

輸液、抗生物質、その他症状・合併症に応じて種々の治療をします。

治癒

無菌性髄膜炎は一般に1週間ぐらいで治癒します。化膿性髄膜炎は死亡率も高く、後遺症も20~30%みられます。

予防対策

■症状のある子は、早めに休ませ、医療機関の受診を受ける。
■手洗い、うがいを十分に行なう。
■栄養睡眠を十分にとる。

感染症まめ知識

無菌性髄膜炎とは神経系の代表的なウイルス感染症であり、症状としては、急性の発熱と嘔吐、頭痛が3大症状です。熱は高いことが多く、頭痛も強く訴えることが多いです。

E型肝炎

感染経路

経口感染(汚染された飲料水、食物から)

好発年齢

成人

潜伏期間

2~6週間(平均約30日)

原因について

ウイルスに汚染された飲料水による感染。わが国では輸入感染症として発生がみられる。

治療方法

治療としては、他の急性肝炎と同様に対症療法のみである。劇症肝炎に対しては、血漿交換などによる治療が必要となる。ワクチンはまだ開発されていない。

治癒

通常、GOT、GPTは1峰性、時に2峰性の上昇を示して1~2ケ月間で正常化する。E型肝炎は妊婦での劇症肝炎しやすく、致死率は17~33%である。

予防対策

一般的な予防としては、汚染地域と考えられる地域に旅行する場合に、飲料水、食物に注意し、基本的には加熱したもののみを摂取するように心がける。

感染症まめ知識

発病は急激で、38℃以上の発熱(3~4日間)、全身倦怠感、食欲低下、悪心、嘔吐、上腹部膨満感、鈍痛、尿の膿染で始まります。これらの症状は7~10日で軽減、黄疸は発病数日後から。

参考文献

肝臓 42巻3号
114-119(2001) 田中英司 清澤研道
信州大学医学部第2内科

感染症の予防・対策

手洗い

手洗いの基本は、石鹸と流水です。

手洗いの時間は、少なくとも10秒は必要です(10秒は思っているより長いですよ)。石鹸と流水で15秒以上の手洗いをすると、消毒薬をを使ったくらいきれいになります。汚染の可能性のある場合・外出後・食前・トイレ後には必ず手洗いを。また、いちばん汚れるところは爪の間なので、常に爪は短く切っておきましょう。

よりキレイになる、手の洗い方

●指先でもう一方の手のひらを、こするように洗う。(両手とも)
●両手の指の間をこすり合せて洗う。
●親指をもう片方の手で包み、こするように洗う。

手洗い場や流しがないときには・・・

アルコール製剤で手指をこすって消毒しましょう。細菌、B型肝炎ウイルス、HIVウイルス、結核菌はこれで死滅します。ただ、アルコール製剤を使用すると、手荒れを招く場合があるので注意して使いましょう。

家庭でできる消毒法

煮沸消毒

5分間煮沸を行えば、日常社会生活で感染の危惧のあるものはすべて死滅できます。
大腸菌(O157を含む)、ブドウ球菌(MRSA、メチシリン耐性菌を含む)は、80度の熱湯で5秒間。エイズウイルスは、80度の熱湯で60秒間。B型肝炎ウイルスは、100度の熱湯で2分間。結核菌は、100度の熱湯で5分間煮沸することで、死滅できます。

消毒薬を使うべきところ

ドアノブ、洗面所の取っ手部分、トイレ周辺など汚染しやすいところは、ふいてから、しっかり消毒しましょう。

一般の消毒薬について

アルコール製剤 プラスチック製品には使わない方が良いでしょう。
ポビドンヨード
(イソジンなど)
人に広く用いられている消毒薬です。
抗生物質ではないので、体内に入れてはいけません。
漂白剤 感染患者の使用したねまきなどは、漂白剤に浸してから洗濯します。
消毒薬 糞便で汚染されたものは、消毒薬に浸してから洗濯します。

予防接種

予防接種とは

感染症予防の最大の武器となる予防接種。その中でも、病気を起こす力を弱めた微生物を使って予防接種をするものを生ワクチンといい、ポリオや麻疹、風疹、おたふくかぜなどで使われています。弱いとはいえ、ウイルスがふえるので軽い症状が出ます。結核の予防に使うBCGもこの仲間です。一方、死菌ワクチンといって殺したウイルスで予防接種をする方法もあり、インフルエンザや狂犬病などで用いられています。また、破傷風や百日咳、ジフテリアといった細菌が出す毒素によっておこる病気には、毒力をなくした毒素(トキソイドといいます)がワクチンに用いられています。

予防接種のしかた

  • 経口で

  • 注射やメスで皮下に

接種にあたり注意する人

妊婦の方 妊娠中は黄熱病の予防接種を控えてください。
インフルエンザ、コレラ、A型肝炎の予防接種は妊娠3カ月以降なら受けられます。
アレルギー体質の方 医師に相談してから接種を受けましょう。
卵アレルギーの方は、インフルエンザなどの予防接種を控えてください。

海外旅行時の心得

出発前には健康診断を受信し、必要に応じて予防接種を受けるようにしましょう。

海外旅行中に注意する症状

症状 処置 疑う感染症 予防するには
下痢(嘔吐) 水分の補給
・スポーツドリンク
・ジュースなど
※血便があるときは病院へ
・コレラ・赤痢
・サルモネラ
・O157(病原性大腸菌)
生水、生もの、加熱不十分な肉などに注意する
せき・たん 水分の補給
・スポーツドリンク
・ジュースなど
膿性たんのときは抗生物質が有効
※血たんがあるときは病院へ
・感冒(咽、咽頭炎)
・急性気管支炎
・肺炎、肺結核
・過労をさける
・出発前の健康診断
発熱(さむけ) ・身体を冷やす
・さむけがあるときは保温する
・マラリア
・A型肝炎
・チフス
 が疑われ時は病院へ
・マラリアの予防薬を入手
・夜、蚊にさされないように注意
・A型肝炎の予防接種を
犬に噛まれたとき 犬にかまれたら治療のためにワクチンの接種 ・狂犬病
・破傷風
狂犬病の汚染地域(特に東南アジア・インド)への旅行の場合は予防接種、破傷風はどこでも注意

■引用図書■

「だれでもわかる感染症」(株)へるす出版
監修:清水喜八郎
著:清水喜八郎、山田恵三、岩本愛吉
絵:峰村りょうじ

■参考図書■

日本医師会雑誌:「感染症の診断・治療ガイドライン」