福井県医師会長からの挨拶
最終更新日:2022.04.01
福井県医師会長
池端 幸彦
1955年4月18日生
令和4年の新年度を迎えるに当たり、念願だった福井県医師会公式ホームページの全面リニューアルを記念して、一言ご挨拶申し上げます。
ご承知の通り近年、医療を取り巻く環境も大きく様変わりしようとしており、地域包括ケアシステムも、人口減少を伴いながら高齢者がピークを迎える2040年までの超少子高齢社会「人生百年時代」という新たな段階への対応を求められています。それは正に、「病院・施設から地域・在宅へ」、医療と介護も「連携から統合へ」と、大きくパラダイムシフトしようとしているのです。更に地域医療構想の名の下で病院の機能分化と連携、在宅医療の推進が叫ばれる一方、医師の偏在対策や専門医制度が遅々として進まない中、「医師の働き方改革」では医師を始めとする医療従事者の働き方も大きく変革・制限されようとしています。
このように医療界は大変厳しい時代を迎えようとしている中、令和元年12月中国湖北省武漢市から始まったCOVID-19は瞬く間に世界中に拡散し、福井県内においても、令和2年3月18日の第1例発生後、一時は医療崩壊も危惧される状況にまで至りました。私自身、よもや会長就任一期目から、このようなパンデミックの陣頭指揮を迫られる事になろうとは夢にも思いませんでしたが、これも天命と覚悟を決めて、今自分に出来ることを精一杯努めて参りました。
結果として、杉本達治知事の陣頭指揮の下、県民各位の深いご理解と共に、会員そして会員医療機関の皆様方の絶大なるご協力ご支援のお陰で、様々な困難、紆余曲折がありながらも、COVID-19に対する外来・入院診療、PCR検査、更にはワクチン接種等の体制が比較的順調に整備されてきたことに、改めて心から感謝申し上げたいと思います。
またこの間、広く県民からの「心をひとつに ふくい応援」基金を始め、各企業様や団体様からも多くのご厚志、ご支援等を頂きましたことも合わせて、この場をお借りして厚く御礼申し上げたいと思います。
しかし医療界においては、前述の如く後期高齢者の窓口2割負担、大病院の紹介状無し外来の定額負担、本年4月からの健康保険証のオンライン資格認証制度の本格導入、更には本年4月の診療報酬改定による入院・外来の機能分化・連携やかかりつけ医機能の充実、更にはオンライン診療の本格導入や不妊治療の保険適用、5疾病6事業として新たに加えられることになった「新興・再興感染症」への医療提供体制を含めた新たな地域医療構想の体制づくり等、本年度もまた非常に重要な課題が目白押しであります。はからずも私は、これらの案件に深く関わる中央社会保険医療協議会(通称:中医協)や社会保障審議会医療保険部会の委員も拝命しておりますので、会員各位のご意見も十分踏まえながら、しっかりと議論を重ねていきたいと思います。
近代日本資本主義の父と言われた渋沢栄一氏は、代表的著作でもある『論語と算盤』の中で、「逆境の時こそ、力を尽くす」という言葉を遺しています。更に逆境とは「大丈夫の試金石」、つまり「人がその真価を試される機会」であり、また逆境には2種類あり、1つは地震や水害といった「自然的逆境」で、これは人の力で全てを克服することはできず、したがって「足るを知る」「分を守る」という心がけが肝心であり、やるべきことをやったならば、あとは心静かに天命にゆだねることだといいます。しかしもう1つは人がつくる「人為的逆境」であり、これを誰かのせいにするのではなく、自分がやったことの結果だと受け止め、人為的な逆境に対しては、自らが志を立て自分が成し遂げたいと思うことに奮励すべきであり、そうすれば「大概はその意のごとくになるものである」と説いています。(「論語と算盤」渋沢栄一原作 より)
私達が今直面しているコロナ禍は正に「自然的逆境」であり、「人事を尽くして天命を待つ」しかないのかも知れませんが、その対策の過程で、私達はどうしても「できるか、できないか」という軸で考えがちです。一方、渋沢氏は「やりたいか、やりたくないか」という軸。本当は「やりたい」ことなのに「できない」と思っていること、これも「人為的逆境」と言えるかもしれません。私自身まだまだ力不足の感は否めませんが、「逆境の時こそ、力を尽くす」との渋沢氏の精神を肝に銘じ、二期目の今年度も県民のため会員のために、会員の皆様のお力をお借りしながら、「やりたい」けど「できない」ことを少しでも克服していきたいと思います。
もう1点、今私が強く意識するのが、『正義』という言葉です。法哲学者 井上達夫東京大学名誉教授の言葉を借りれば、 “『正義』とは、自分の他者に対する行動が、たとえ相手の視点に立ったとしても正当化できるか、その「反転可能性」を自己批判的に吟味してみることである”のです。この正義の本質を見誤り、自身の都合で自身だけが信じる『正義』に向かって突き進んだ今世紀最悪の事態が、今ウクライナで起こっている『侵攻(戦争!?)』ではないでしょうか。敢えて言えば、トップの信じる「正義の判断」が、時として殺人者にもなり得る証明とも言えるかもしれません。
改めて常に相手の立場に立っても成り立つ『正義』を持ち続けながら、私の座右の名とも言える「Act Now for the Future 〜未来のための今〜」を考え、県民の、国民の、いや地球人の安心・安寧と健やかな老いのために、県医師会活動に邁進したいと思います。
最後になりましたが、新しい福井県医師会公式ホームページが、少しでも県民のそして会員のお役に立つことを願い、また近い将来、明るい“New Normal”時代が必ずやってくる事を信じつつ、会員も含めた全県民のご健勝とご多幸をご祈念申し上げまして、ご挨拶とさせて頂きます。
【キャッチフレーズ】
Act Now for the Future 〜未来のための今〜
【基本方針】
県民のための県医師会へのチェンジ
【5つの活動指針ver.2】
1.組織の効率化・活性化
2.郡市区医師会との連携強化
3.県及び県内医療関連団体・組織等との連携強化
4.災害対策本部設置と機能強化
5.広報活動・医政活動の充実
令和4年4月1日
一般社団法人 福井県医師会 会長
池端 幸彦
学歴
昭和43年3月 | 福井大学教育学部(現・教育地域科学部)附属小学校 卒業 |
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昭和46年3月 | 同 附属中学校 卒業 |
昭和49年3月 | 慶應義塾高等学校 卒業 |
昭和55年8月 | 慶應義塾大学医学部 卒業 |
学位・免許・資格
昭和55年11月 | 医師免許 |
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昭和61年11月 | 日本外科学会認定医 |
平成02年6月 | 日本消化器外科学会認定医 |
平成04年10月 | 日本医師会認定産業医 |
平成06年1月 | 日本医師会認定健康スポーツ医 |
平成13年3月 | 介護支援専門員 |
職歴
昭和55年9月 | 慶應義塾大学医学部外科学教室 入局 |
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昭和56年5月 | 浜松赤十字病院外科 勤務 |
昭和57年6月 | 国立霞ヶ浦病院外科 勤務 |
昭和58年7月 | 慶應義塾大学病院 一般消化器外科 勤務 |
昭和61年5月 | 池端病院 副院長 |
平成01年4月 | 池端病院 院長(~現在) |
平成09年8月 | 医療法人池慶会 理事長(~現在) |
平成20年5月 | 社会福祉法人雛岳園 理事長(~現在) |
学会並びに社会における活動等
(県内)
平成12年4月 | 福井県国保連合会 介護給付費審査委員会会長(〜令和2年3月31日) |
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平成13年7月 | 福井大学医学部 臨床教授(~現在) |
平成13年10月 | 福井県慢性期医療協会 会長(~現在) |
平成17年4月 | 福井県医師会 介護保険担当理事(~平成27年6月) |
平成17年5月 | 福井県訪問看護推進協議会 会長(~令和元年6月) |
平成20年4月 | 福井県地域包括・在宅介護支援センター協議会 会長(~平成26年5月) |
平成20年5月 | 福井県介護支援専門員協会 会長(~平成27年5月) |
平成23年5月 | 福井県医師会 副会長(~令和元年6月) |
令和元年6月 | 福井県医師会 会長(~現在) |
令和元年6月 | 福井県医療審議会 会長(~現在) |
(県外)
平成23年5月 | 日本医師会 代議員(~現在) |
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平成24年6月 | 日本慢性期医療協会副会長・事務局長(~現在) |
平成28年8月 | 厚労省 在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ構成員(~令和3年6月) |
平成29年4月 | 厚労省 高齢者医薬品適正使用検討会 構成員(~現在) |
平成29年4月 | 日本病院団体協議会 診療報酬実務者会議 委員長(~令和2年8月) |
平成30年7月 | 社会保障審議会 医療保険部会 構成員(~現在) |
令和02年8月 | 日本医師会 地域包括ケア推進委員会 委員長(~現在) |
令和02年8月 | 中央社会保険医療協議会(中医協)委員(~現在) |